
【書誌情報】
【レーベル】 | ガガガ文庫(小学館) |
【著者】 | 立川浦々(たちかわうらうら) |
【イラスト】 | 楝蛙(おうちかえる) |
【ISBN】 | 9784094530292 |
【発売日】 | 2021年9月17日 |
【ページ数】 | 342p |
【既刊数】 | 1巻(2021年9月現在) |
【ジャンル】 | シュール系コメディ(?) |
【あらすじ】
未知との遭遇――地方公務員×異世界エルフ
区役所福祉生活課支援第一係長、中田忍(32歳独身)。
責任感の強い合理主義者。冷酷だが誠実、他人に厳しく自分自身にはもっと厳しい男。ある深夜、帰宅した忍は、リビングで横たわるエルフの少女を発見。忍は悟る。
「異世界エルフの常在菌が危険な毒素を放出していた場合、人類は早晩絶滅する」
「半端な焼却処理は、ダイオキシンの如く地球を汚しかねない」
「即座に凍結し、最善で宇宙、次点で南極、最悪でも知床岬からオホーツクの海底へ廃棄せねば……」だがその時、《エルフ》の両瞼がゆっくりと開き――
ガガガ文庫公式サイト新刊情報ページより引用
【作品解説】
現実に突如紛れ込んだ異分子・異世界エルフの観察記録コメディ
本作は、表紙からは中々想像がつきにくいかとは思いますが、シュールよりのコメディ作品に該当する作品となっています。
登場人物はいたって真面目に行動しているのに、どこかその様子は滑稽で面白い。そんな感じの噛めば噛むほど味が出るスルメのような作品です。
まずは簡単に作品内容の解説から。
作品の舞台は現代日本です。
主人公は、区役所の福祉生活課で係長を勤める公務員の男・中田忍(なかたしのぶ)。
この主人公がまぁ……曲者中の曲者でありまして……。
責任感の塊と言いますか、超絶真面目人間でして、不器用・冷酷・合理的主義者というなんとも融通の利かないTHE・堅物なんです。
そんな性格もあってか、中田忍は職場で正論をぶつけて部下を論破し続ける無意識に恐れられる存在となっており、読者によってはパワハラ上司のような少し苦手な人物像に写るかも知れません。(この時点だとラノベ主人公としてはかなり印象悪め)
ですが、そんな真面目人間の彼が唯一恐れていた存在と出会うことにより、物語は動き出します。
彼が恐れていたもの、それは『未知の存在』です。
ある日、忍が仕事から帰ると、自分の部屋の中になぜか異世界からきたエルフがいたのです。
普通の人間ならまず考えないと思いますが、なぜか(?)未知の存在と遭遇した時の対処法を考えていた忍は、普通の人間であればまず思いつかないようなことを決行しようとするのです。
それは、『異世界からやってきた存在に付着する常在菌の蔓延を食い止めるため、エルフを冷凍保存し異邦の地へと投げ捨てる』ということ。
——なかなかに発想がイカれてるとは思いません???????
エルフと友好関係を結ぶとかではなく、本人は至って真面目に考えたうえで、初手に無条件で何もしていない無垢なエルフを海に鎮めようと模索する。そんな冷静にぶっ飛んだことをしようとするのが忍という人間なのです。
そして、そうこうしているうちに眠っていたエルフが目を覚まして——。
その後、忍に助っ人として呼び出された大学の友人や職場の後輩女子などもその場に現れ、三人は異世界からきた言語も習慣も未知数なエルフの行動を共に様々な観点から観察していく——といった感じな作品です。
個人的な読後の感想
すごい癖が強い作品がでてきたなと思いました()
現代を舞台に、異世界からきた存在と出会う流れのある作品は数あれど、言い方はあれかも知れないですが、ここまでバカらしく感じるくらいにエルフとの出会いを細かく真面目に書いた作品は初めて読みました。
ご都合主義で順応性の高い主人公ではなく、冷静に現実的な思考を元にエルフと関わる本人たちの姿は、いたって真面目であるはずなのに馬鹿らしくて面白いんですよね。
序盤のシリアスな展開は何処に行ったんだ……って思うくらいのシュールな笑いが連発される本作は、唯一無二の作品だと思いました!
バカ真面目でイカれた忍が主人公だからこそ生まれた物語なのだと思います。
こういう真面目から生まれてくるコメディ作品、私ほんと大好きです!
【まとめ】
【個人的作品傾向評価】

ラノベ初心者オススメ度:★★☆☆☆(ラノベ熟練者向け)
【総評・レビュー】
【高評価ポイント】
・ラノベ初心者よりも熟練ラノベ読み向けな作品である印象。癖の強い独特な語り口や空気感は唯一無二。真面目なのにどこかクスッと笑えるコメディが魅力的な作品。
【気になるポイント】
・表紙やタイトルでどういった作品なのか分かりづらいのが難点か。内容としては文句なしに面白いのですが、パッケージング力で損をしている印象。初手でコメディ作品だと分かる工夫がどこか欲しかった。
・一つ一つのエピソードを丁寧に書いているためか、話の進行速度がかなり遅い印象。一気読みすると途中で飽きる可能性があるため、1エピソードごとに区切りをつけて読む方が読みやすいかも(?)
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