
【書誌情報】
【タイトル】 | ハル遠カラジ |
【レーベル】 | ガガガ文庫(小学館) |
【著者】 | 遍柳一 |
【イラスト】 | 白味噌 |
【ISBN】 | 9784094517378 |
【発売日】 | 2018年6月19日 |
【ページ数】 | 392p |
【あらすじ】
たとえそれが、人でなかったとしても。
これでも私は、身のほどはわきまえているつもりである。
武器修理ロボットとして、この世に産まれた命。
本来であればその機能を駆使して人間に貢献することが、機械知性の本懐とも言えるだろう。しかし、どうもおかしい。
人類のほとんどが消え去った地上。主人であるハルとの、二人きりの旅路。
自由奔放な彼女から指示されるのは武器修理のみに留まらず、料理に洗濯と雑務ばかり。
「やるじゃねえか、テスタ。今日からメイドロボに転職だな」
全く、笑えない冗談である。
しかしそれでも、ハルは大切な主人であることに違いはない。
残された時を彼女のために捧げることが、私の本望なのである。
AIMD――論理的自己矛盾から生じる、人工知能の機能障害
私の体を蝕む、病の名である。
それは時間と共に知性を侵食し、いつか再起動すらも叶わぬ完全停止状態に陥るという、人工知能特有の、死に至る病。
命は決して、永遠ではないから。だから、ハル。
版元ドットコムより引用
せめて、最後のその時まで、あなたとともに――。
第11回小学館ライトノベル大賞ガガガ大賞を受賞した『平浦ファミリズム』の遍柳一がおくる、少しだけ未来の地球の、機械と、人と、命の物語。
【おすすめポイント】
AIと人間の親子愛を描いた、荒廃世界ロードムービー
本作の舞台となるのは、とある理由で地上から人がほとんど消えてしまい、荒廃してしまった世界。
そんな終末世界で、ロボットと人間の少女という不思議な関係での旅路を描いた作品が本作です。
本作の語り手であるロボットの名前は、テスタといいます。
テスタは、元軍事用ロボットであり、戦争地域現地での武器修理や改造を行うロボットとして扱われていました。ですが、『AIMD』というロボット特有の病にかかってしまい、いつ機能停止してもおかしくない状態にあります。
テスタは自身の病を直す術を見つけるため、限られた時間の中、旅をしていきます。
人間の少女の名前は、ハルといいます。
ハルは、言動は粗暴で少々荒々しい性格の少女なのですが、根は優しい女の子です。
危なっかしい性格の彼女ですが、テスタと出会い、共に『AIMD』を直すため旅をしていきます。
彼女の他にも、旅を続ける中でさまざまな人と出会い、仲間も増えていきますが、主にこの二人の関係性を描いたのが本作です。
本作の魅力は、荒廃世界でのロードムービーという世界観もありますが、なによりもそのテーマ性にあります。
あっているかは分かりませんが、私が本作を読んで感じた本作のテーマは『親子愛・家族』だと思いました。
要約をするなら
『人間のような知性を持ったロボットは、果たして人間の母親になることができるだろうか——』
といった感じです。
それくらいに、テスタは感受性が豊かであり、人間と言われても忖度ないくらいの知能があります。
限られた命の中で、テスタはハルに何を残すことができるのか。ロボットと人間という不思議な関係性であるにも関わらず、まるで本当の親子のような関係性にまで発展している本作は、異質でありつつ、そしてとても優しい世界なのです。
著者の遍先生の書き記す事細かな心情描写にも本作の魅力に拍車がかかり、まさに一つの家族を描いた作品、そう誰もが口を揃えていえる、そんな作品に仕上がっています。
本作を読了した後は、自分とはなんなのだろうか。自分は、限られた時間の中で何ができるのだろうか。そう、感じさせてくれること間違いないかと思います。
二人の旅路の結末はいかに——。
ぜひ、最後まで見届けてあげてください。
【好みが分かれるポイント】
特になし
【まとめ】

【総合評価】★★★★★
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